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オランダの一部リーグ、フェイエノールトへ完全移籍する小野伸二は、中田英寿のように活躍できるでしょうか。日本では、ヨーロッパ各国のリーグの中で、イタリアの「セリエA」、イングランドの「プレミアシップ」、スペインの「リーガ・エスパニョーラ」が、世界トップレベルのリーグという受け止められ方をしています。しかしオランダ・リーグが、決してレベルが低いわけがありません。

オランダは若くて優秀な選手を次々に輩出することで知られています。オランダで実力をつけ、イタリアやスペインやイングランドのトップクラブに移籍するというのが、ある意味でメインストリートの1つでもあります。南米からヨーロッパに渡る選手たちにも、そのようにステップアップしていく選手が数多く存在します。ブラジルのロナウドも、まずはオランダのPSVアイントホーフェンに移籍し、それからスペインのバルセロナ、そしてイタリアのインテルへと歩んで行きました。小野もぜひ、そんなステップアップを果たして欲しいものです。
もともと、天才と評されてきた小野です。中田よりも技術的には上ではないかとも言われています。キックの種類は中田よりも多いでしょう。キックの精度も中田より高いかもしれません。小野には、中田とは違う柔らさがあるわけです。そんな小野には、中田に続いてワールドクラスの選手になってくれるのではないかという期待感があります。
しかし、オランダ人は他のスポーツや格闘技でも知られるとおり、非常に身体も大きく、運動能力も高いものがあります。当然、今まで経験していなかった激しい身体のぶつかり合いにさらされることでしょう。さらに、ヨーロッパの、しかもオランダのピッチ(芝)は日本のピッチと比べてはるかに深いと思われます。その中で、最初は相当とまどいもあるでしょう。
そしてもう一つ、今までにない運動量も必要になると思うのです。
日本では、小野へ自然にボールが集まりました。しかし、各国から優秀な選手が集まり、練習そのものが戦いの場である海外チームでは、激しさと運動量でもライバルたちを圧倒することが必要になるのです。小野の技術レベルについては、何の心配もありません。あとは、激しく厳しい戦いの中で、いかに勝ち抜いていくかということだけだと思います。

イングランドのプレミアシップ、アーセナルへ完全移籍する稲本は、いきなりのトップレベルのチームへの移籍で、正直言って、なかなか試合に出場すること自体が難しいと思います。しかし、稲本自身が言うように、トップクラブでは練習自体が非常に大きな学習の場であることは事実です。稲本には、少し長い目で見守ることが大事ではないかと思います。日本では強さを誇る身体能力も、海外のトップレベルの選手たちの中では、まだまだでしょう。技術的には、もちろん小野や中田に劣らないレベルにある稲本ですが、まずはシュート(稲本の場合は、特にミドルシュート)の精度をもっともっと磨いて欲しいものです。
また、日本代表やガンバ大阪でプレーしてきた「ボランチ」で勝負していくなら、いつ、どういうプレーをするのか、という点を学習していくことが重要になるでしょう。それは、現代サッカーにおいて、攻守の切り替え役「プレイメイカー」機能が要求される中盤の底=ボランチ(ボランチとは、元々ポルトガル語で「ハンドル」の意味です)に不可欠な能力です。とにかく、ひと回りもふた回りも大きくなっていく稲本の姿を期待したいものです。吸収力も成長性も高い稲本のことですから、きっと私たちを楽しませてくれると思っています。

西澤は、スペインのエスパニョールに半年間所属(レンタル移籍)していましたが、フォワードの選手でストライカーにもかかわらず、とうとう1ゴールもあげられないまま、スペインを去りました。たいへん残念でした。
2000年6月のモロッコでのフランス戦でのジャンピング・ボレーシュート、今年5月のコンフェデ・カップのカナダ戦でのダイビング・ヘッドなどを見れば、西澤の能力の高さは疑う余地がないところです。日本人ストライカーの中で、最も身体能力に恵まれている選手でしょう。その西澤の、イングランドのプレミアシップ、ボルトンへのレンタル移籍が決まりました。西澤は、日本やスペインで経験したディフェンダーよりもさらに大きなディフェンダーを相手に、ゴールをあげて見せなくてはなりません。
聞くところによると、ボルトンはフォワードを1トップにするシステムを考えているようです。1トップで起用された場合は、ポストプレー(後方から入ってくる「くさび」のボールのターゲットになり、ボールをキープしたり、正確に味方に落とすプレー)や、スペースに走り込んで味方のボールを引き出すプレーが、さらに要求されます。こうしたプレーについては、西澤はいま一つのところがありますので、頑張って磨きをかけて欲しいと思います。
西澤が日本代表に初選出されたのは、中田と同じく1996年5月のことでした。それから5年、私は期待し続けた選手です。厳しい環境とは思いますが、イングランドで、一段クラスの高い選手になって欲しいと思います。

小野も稲本も西澤も、イタリアで活躍する中田も、もうすぐ、8月中旬から新シーズンが始まります。彼らの活躍ぶりと頑張りを、見守っていきたいと思います。
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