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世界が大きく揺れている中、トリニダードトバコで、U-17ワールドユース選手権(17歳以下の世界大会)の火ぶたが切られました。

フットボール(サッカー)の世界大会と年齢制限について、ちょっとおさらいをしておきましょう。
U-17ワールドユース選手権は、17歳以下の代表選手によって構成されるものです。そして、U-20ワールドユース選手権は、20歳以下で。そしてオリンピックは、フットボールに限ってはU-23(23歳以下)で構成されます。いわゆる「フル代表」、つまり年齢制限のない最強の選手構成によって競うのがワールドカップ、というわけです。つまり、フットボール・シーンでは、ワールドカップが頂点に存在しているるわけです。

今年5月〜6月に、日本と韓国で「プレ・ワールドカップ」として開催されたコンフェデレーションズ・カップは、もちろん「フル代表」による公式世界大会ではありますが、あくまで各地域ごとのチャンピオン(ヨーロッパなら「ヨーロッパ選手権」のチャンピオン、アジアなら「アジア・カップ」のチャンピオン等)だけによって競う大会で、ワールドカップ→オリンピック→U-20→U-17と構成される世界大会の階層とは別個の存在ということになります(言い換えると、コンフェデレーションズ・カップは、それほど権威のある大会ではない、ということです。各国の出場選手(=各国の力の入れ方)を思い起こしてみれば、おわかりですよね)。

ワールドカップやオリンピックが4年ごとに開催されるのに対して、U-17ワールドユース選手権とU-20ワールドユース選手権は2年ごとに開催されます。日本は、U-20ワールドユース選手権には1995年・97年・99年と3大会連続して、アジア予選を勝ち抜いて出場しています。99年には、小野伸二(オランダ・フェイエノールト)を中心に、準優勝も果たしました。

U-17ワールドユース選手権については、1995年にアジア予選で優勝して出場を果たしたものの、その後2大会連続して出場権を逃していました(1993年には日本で開催されたので、開催国としてアジア予選免除で出場しました)。

今回、3大会ぶりに出場権を獲得したわけで、期待してトリニダードトバコでの日本選手の戦いぶりを見つめましたが、残念ながら1勝2敗の勝点3ポイントのグループ3位で、グループ・リーグ戦で敗退という結果に終わりました。フランス、ナイジェリア、アメリカと同じグループに入ったのですが、確かに非常に強敵揃いで、厳しいグループに入ってしまったというのはありました。しかし、日本選手の戦いぶりには、少し残念だったというか、結果がついてこなかったからではなく、日本のフットボール(サッカー)、ひいては日本のスポーツ環境について、考えさせられるものがありました。

初戦はアメリカとの対戦で1-0で勝利したのですが、ディフェンス面での未成熟さが気になりました。相手選手との間合いの取り方や、センター(中央)の脆さ、お互いのカバーリングの悪さなどです。その悪い予感が的中したわけでもないでしょうが、第2戦のナイジェリアには0-4で完敗。第3戦のフランスにも1-5で大敗という結果になったわけです。とくにフランス戦については、点の取られ方が非常に悪いです。前半の中ば、わずか10分ほどの間に立て続けに3点を取られる。後半もわずか5分ほどの間に、続けて2点を失う。メンタル面のひ弱さも感じてしまいました。

今回のU-17日本代表はそんなに充実していなかったのかというと、そんなことはありません。1993年の日本開催のU-17ワールドユース選手権に出場した選手の中には、中田英寿(イタリア・パルマ)や松田直樹(横浜F・マリノス)もいましたし、そのチームの中心(背番号10)だった財前宣之(J2のベガルタ仙台)はベスト・イレブンにも選出されました。今回のU-17日本代表と1993年のU-17の選手たちと比べてみれば、専門家やかなり詳しいファンの大多数が、今回のU-17日本代表の方がボール扱いの技術は確実に上、と言うでしょう。

では、何が残念だったかというと、1つは、「プレーが軽い」ということ。日本では、どんなスポーツでも、上手な選手にありがちなことです。
2つめに、これだけ日本のフットボール(サッカー)も進化してきたけれども、肝心な「サッカー頭脳」に、それに相応しいだけのレベルアップが見られなかったこと。世界の国々と比べて、むしろ遅れをとっているようにさえ思われました。日本のサッカーの急速な進化については、全世界が認めているところです。しかし、それにも増して、世界のフットボールも実に速いスピードで進化し続けているのです。それを埋めるには、「サッカー頭脳」においては、世界水準より一層創造的に、むしろ世界水準をリードしていくことが必要になるのではないでしょうか。

確かに、ナイジェリアやフランスの選手と比べてフィジカル(身体能力)で劣ります。しかし、よくサッカー専門家やメディアが言う「フィジカルの差」によって、今回の結果がもたらされたのではなく、「考えるスピード」「迅速な判断力」「広い視野」といった、「考える力」の不足が目についたのです。それは、サッカーに限らず、日本のスポーツ全体の課題として非常に重要なポイントと思われるのです。

日本は、学校制度とスポーツ文化環境の観点から、ティーンエイジ時代の選手育成、選手の成長・成熟の面で、非常に難しいものがあります。日本の学校教育そのものを否定するものではなく、スポーツ文化環境に関して、「学校体育」中心でスポーツが営まれてきたことが限界であったことへの認識が、ようやく最近になって少し広まり始めています(もちろん、まだまだですが)。それはひいては、選手の育成だけでなく、選手を取り巻く人材、とくに指導者の育成・充実とも密接な関係にあるものです。今回のU-17ワールドユース選手権を通して、そんなことも改めて感じさせられたのでした。
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