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日本代表のヨーロッパ遠征で、J1(J League Division1)はしばしのお休み。J2(J League Division2)の方は、例によって休みなく過酷に試合が続いていますが。今回は、Jリーグの今一番の「見物(みもの)」を幾つか紹介しましょう。

まずは、選手から。私が今お薦めするのは、鹿島アントラーズの背番号5・中田浩二と背番号8・小笠原満男(ともに22歳)、そしてジェフ市原の背番号6・阿部勇樹(20歳)です。

中田浩二は言うまでもなく日本代表選手。代表では「フラット3」(最終ライン=DFライン)の左をつとめますが、アントラーズでは中盤の底、いわゆる「ボランチ」です。DFライン(ディフェンス・ライン)のひとつ前で、相手の攻撃を摘み取り、反撃・攻撃の起点となり、正確なキックで大きな展開力を発揮します。また、最近は得点感覚(ゴール感覚)もますます向上していて、後方から前線に現れてきて、結構ゴールもあげています。日本の「ボランチ」の選手では、イングランド・プレミアリーグのアーセナルに移籍した稲本潤一が代表格ですが、中田浩二にも、是非国際的な選手に育って欲しいと思います。すでに海外のクラブも注目していると聞きます。

小笠原は、日本代表に選ばれそうで、まだ選ばれないでいます。いつもちょうどケガに泣かされてタイミングを失している、という感じです。でも、その能力とセンスは、サッカーファンの中で折り紙つきです。中盤の前目(フォワードに近い位置)を主なプレーエリアとしますが、シュート能力も高く、ミドルレンジ(ちょっと遠い距離)から、鮮やかな美しい弾道のシュートを見せてくれます。冷静で飄々として見える風情と、背筋を伸ばしたボディバランスは、「中田英寿に似ている」という声も多いところです。中田英寿をかつて獲得したイタリア・セリエAのペルージャが、柳沢敦(鹿島アントラーズ)とともに獲得を狙っているという噂があります。

阿部は、ケガが多く、今年のU-20ワールドユースにも出場できませんでした。まだ若い選手ですが、高い技術と広い視野、豊富な創造性を感じさせる選手です。ロングキックの精度も高く、シュート力もあります。中盤の深い位置から最前線に飛び込んで行くセンスも、すでに卓越したものを感じさせます。2002年ワールドカップには間に合わないかもしれませんが、現在20歳の選手たちの中で、将来が最も楽しみな選手かもしれません。

阿部と同じ20歳の選手たちでは、U-20ワールドユース選手権に出場したコンサドーレ札幌の背番号18・山瀬功治、サンフレッチェ広島の背番号15・森崎浩司が、9月29日のJリーグの試合で、物凄いシュートを決めて見せました。「ワールドクラス」と言ってもいいかな(?)というくらいのシュートでした。森崎浩司は、同じサンフレッチェの背番号8・森崎和幸と双子兄弟で、2人ともU-20ワールドユース選手権に出場しました。和幸に一歩遅れをとっていた感もありましたが、その物凄いシュートで、能力の高さを再確認させてくれました。

続いて、チームです。今お薦めするのは、サンフレッチェ広島。今日のフットボール(サッカー)では通常「2トップ」(最前線であるFW=フォワードが2人)もしくは「1トップ」が一般的であるのに、サンフレッチェは何と「3トップ」です。今時3トップとは、見るからに「攻撃的」…なのですが、Jリーグ開幕当初は、逆に守備組織が機能せず、チームとしてのバランスも欠いて、非常に失点が多かったのでした。しかし最近はバランスも良くなり、3トップ以外の選手も後ろからどんどん攻め上がっていく、攻撃的で観ていて楽しい試合を目指してくれているようです。

もう1チームは、FC東京。突出したスター選手は居ませんが、持ち味であるチーム全体で戦う試合内容に、見所が多いチームです。相手チームの攻撃を凌いだ後の逆襲からの速攻(カウンター攻撃)が持ち味でしょうか。また、FC東京のサポーターの応援ぶりも見物ですので、一度東京スタジアムへ足を運んでみてください。屋根つきですから、雨にも濡れませんよ。

さて、以前もお話ししましたが、もう1つの「見物」はJ2です。J2の上位2チームが、来年J1へ昇格することができます。現在、J2は大混戦。残り10試合を切ったところで、京都パープルサンガ、大宮アルディージャ、大分トリニータ、ベガルタ仙台、モンテディオ山形の5チームが、わずか勝点3ポイントの中にひしめき合っています。その次に位置するアルビレックス新潟も、首位までわずか6ポイントです。いつも最終戦でどんでん返しのあるJ2。トップ2を勝ち取るのは一体どのチームなのか、本当に白熱してきました。「運命の日」は11月18日です。

最後に、国内リーグ戦(Jリーグ)の最中に、どうして日本代表がヨーロッパまで遠征に行くのか、不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。

実は、フットボールの世界には「インターナショナル・デイ」もしくは「インターナショナル・ウイーク」という言葉があります。1年のカレンダーの中で何か所か、世界各国の国内リーグ戦を休止して、代表チーム同士の国際試合(フル代表同士による「国際Aマッチ」)に当てるというものです。とくに今年はワールドカップの1年前ですから、ワールドカップ予選という大勝負の「国際Aマッチ」が大部分になります。各国のフットボール協会は、この「インターナショナル・デイ」「インターナショナル・ウイーク」を狙って、ワールドカップ予選や親善試合が入っていない国と折衝して、代表試合を組むのが常識なのです。

それにしても、なぜヨーロッパまで? という疑問はお残りかもしれません。
日本は世界地図の上で「極東」と言われるくらい遠いところにあります。いくら「インターナショナル・デイ」「インターナショナル・ウイーク」とはいえ、日本に長旅で遠征してきたチームと試合をしても、相手は時差ボケでコンディション不良、たとえ勝ったとしても真剣勝負にはならないのです。ましてや、遠路わざわざ日本まで遠征してきた代表チームは中心選手・一流選手不在のBチーム、ということが多いのです。しかし、ヨーロッパならば、それこそ世界中のトップクラスの数多くの選手たちが、ヨーロッパの多くの国々のクラブチームに所属していますから、時差ボケもなく、文字通り各国の「フル代表」が編成しやすいのです。逆に日本代表にとっては、遠路はるばるヨーロッパへ移動し、当然、厳しい戦いになります。しかし、ワールドカップ前の「スパーリング」としては、条件が厳しいほどよいのではないでしょうか。

そんな背景でもって、日本代表はヨーロッパへ乗り込んだというわけです。
「インターナショナル・デイ」「インターナショナル・ウイーク」を利用して試合を組むこととか、真剣勝負の場を求めて海外遠征するとか、実はようやく最近になって実現できるようになったのです。選手たちだけでなく、協会やJリーグをはじめとする組織も進化しようとしている、というわけです。
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