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2002年も3月になって、待ちに待った日本代表の試合が行われました。ファーストマッチは、3月21日、大阪市長居スタジアムでのウクライナ代表との一戦。ウクライナは、惜しくもプレーオフでワールドカップ出場権を逃したものの、旧ソ連の伝統を受け継ぐ強豪です。イタリアのセリエAのACミランで活躍するエースストライカーのシェフチェンコは(やっぱり)来日しなかったものの、ワールドカップのグループリーグでロシアと対戦する日本チームにとっては、恰好の「テストマッチ」です。

日本は、「海外組」を召集せず、日本のJリーグでプレーする選手たちだけで、この試合に臨みました。内容については、う〜ん、いわゆる「しょっぱい」試合でしたでしょうか。もっとも、三都主アレサンドロや市川大祐や小笠原満男など、サポーター・ファンの注目を集めている「新顔」の選手たちをどんどん起用してくれたので、試合自体は最後まで楽しむことはできましたが。
スターティング・メンバーは、GKが楢崎正剛、フラット3は、右から松田直樹、宮本恒靖、中田浩二。MF(ミッドフィルダー)は、中盤の底が戸田和幸と福西崇史、右ウイングバックは市川、左ウイングバックに三都主、そしてトップ下に森島寛晃、FW(フォワード)は西澤明訓と柳沢敦の2トップ。
キックオフ早々から、ウクライナは日本の「フラット3破り」を敢行してきたように私には思えました。伝統国からすれば、相手の戦術を見破ってさっそくエグイ仕掛けをしてくるなんて、朝飯前ということでしょうか。「テストマッチ」のウクライナにしてこうなのですから、ワールドカップ本番が思いやられます。

日本の出来は、正直言ってあまりパッとしません。森島がトップ下に入って、柳沢とともに、相変わらず精力的に、かつ鋭くスペースメイキング、スペースを突く動きをするのですが、どうもボールがうまく動きません。ボールがうまく「おさまらない」「落ち着かない」というか、これではチーム全体がスムースに機能できないよなあ、という印象でした。それと、中盤の底と、FWおよびトップ下の森島との間がずいぶん開いてしまっていたのも気になりました。

試合のほうは、1-0で勝利を収めましたが、このようなテストマッチでの勝利は、もちろん勝つに越したことはありませんが、さほど重要なことではありません。それよりも肝心なのは内容です。特に決定的なチャンス(得点機)が何度もありながら、シュートミスで追加点を奪えなかった点は、嫌な感じです。もっとも、特に柳沢など、素晴らしい動き出しで、どんな相手であっても決定的なチャンスを何度も作り出す能力があるということは確認できたのが、救いではあります。後は、きちんと確実に、ゴールをあげて欲しいですね。そんなわけで、少々不安な、2002年ファーストマッチとなりました。

さて、ウクライナ戦を終えた日本代表は、ポーランドへ向かいました。3月27日、ポーランドの第2の都市・ウッジで、ワールドカップ出場を決めているポーランドとのアウェイ戦に臨んだわけです。3月27日は、以前もお話しした「インターナショナル・マッチ・デイ」で、イングランドVSイタリア、ドイツVSアメリカ、フランスVSスコットランド、ブラジルVSユーゴスラビア、アルゼンチンVSカメルーンなど、世界各地で20試合以上もの国際試合が行われました。

敵地へ乗り込んでのいきなりの試合、しかも、ピッチ(グラウンド)状態は、ぬかるんでいて不利というハンディをどう克服して見せてくれるのか、注目していました。
ピッチ状態が日本と違って、ぬかるんでいるといっても、相手も同じ条件なのだから、理由にするのはおかしいと思う方もおられるでしょうか? まず、ピッチ状態が悪いと、日本の特長である素早いパスワーク(パス回し)に影響が出ます。それと、ピッチがぬかるんでいると、当然、ロングボール主体の肉弾戦になる傾向が強いわけで、そうなると体格で劣る日本選手にとって不利、ということなのです。もちろん、そんなピッチでの「インターナショナル・マッチ」の経験が豊富な選手が、日本にはまだ多くない、ということもあります。

ポーランド戦には、海外組の選手たちも招集されました。スターティング・メンバーは、GKが川口能活、フラット3はウクライナ戦と同じく、右から松田、宮本、中田浩二。MF(ミッドフィルダー)は、中盤の底が2枚で、戸田と稲本潤一、右ウイングバックはウクライナ戦と同じく市川、左ウイングバックは小野伸二、そしてトップ下に中田英寿が入りました。FW(フォワード)は鈴木隆行と高原直泰の2トップで行きました。1トップにするのかとか、トップ下を置かないシステムにするのかとも思いましたが、ノーマルな「2トップ&トップ下」システムで臨みました。

試合開始早々、ポーランドに押し込まれましたが、相手は体格に任せてきますし、アウェイですから。押し込まれているように見えても、まったく心配していませんでした。そして、徐々に日本ペースとなります。ウクライナ戦と違って、フラット3も安定していて、日本の素早いプレス(プレッシング)、相手ボールに対する囲い込みが、非常に効果を発揮します。正直言って、(テストマッチですから勝ち負けはともかくとして)もっと苦戦するかと思っていたのですが、90分間安心して見ていられました(「やられた」というシーンは試合終盤の1度くらいだったでしょうか)。ポーランドが得意とする「堅実に守ってからのカウンター攻撃」をさせない、中盤での素早いボール回しをベースとして、日本チームの戦いぶりが「はまった」試合になった感じがします。

存在感を示したのは、やはり中田英寿でしょう。ホォ〜というプレー、ゲームメイクを随所に見せてくれました。お気づきになった方もいらっしゃると思うのですが、中田はボールをキープできるし、パスを出すにしても、もちろんダイレクトパスも得意ですが、もう一方で「タメ」を作れる、日本代表にはまだ数少ない存在なのです。そんなプレーが際立っていました。どうしても必要な存在ですね。

もう1人、最近ヨーロッパで活躍目覚しい小野についても、私はこの試合の影のMVPではないかと思いました。一見、小野があまり目立たなかったかもしれませんが、この試合では右ウイングバックの市川が積極的な攻撃姿勢を見せた(中田英寿をはじめ、周囲もそういう意図があった?)ため、小野はむしろ、前目(相手ゴールに向かって)には抑え気味で、実に巧みにチーム全体のバランスをとっていたと思います。また、小野もボールを落ち着かせることができ、そしてボールを散らせることができる選手であり(そのため、所属するオランダのフェイエノールトでは、今や中盤の要として、なくてはならない存在になっています)、その分、中田英寿もマークが分散して、動きやすかったのではないかと思われるのです。

逆に気になったのが、稲本です。所属するイングランドのアーセナルで出場機会が非常に少ない稲本ですが、そのためとも思いませんが、本来のダイナミックな「ボランチ」ぶりが影を潜めてしまったような気がします。また、自分がボールを持った時に、自分の周囲の状況(例えば、背後から自分にアタックしてこようとしている相手選手に対する危険察知など)に関する「アンテナ」が、稲本らしくないなあと思わせる場面が幾つもありました。
ボランチとして、インターナショナル・プレイヤーに成長してくれることを期待しているだけに、少し気になりました。

TVで観戦された方には、「ポーランドって弱いじゃん」とお思いになった方もいらっしゃるかもしれません。確かに、本気印の戦いは、全然こんなものではないと思います。ですが、たとえそうであっても、ヨーロッパの敵地へ乗り込んで、2-0の完勝を見せてくれたことは、大きな自信になったと考えてよいのではないでしょうか。私のように30年あまり見続けてきた者にとっては、正直、嬉しい時代になったものです。

でも、これでワールドカップは安心というわけでは全然ありません。この試合は、あくまで本番(本勝負)に向けての「テストマッチ」です。この試合で非常に良いパフォーマンスを見せた日本チームは、逆に言うと丸裸にされてしまった、偵察されてしまったわけです。もちろん、日本チームもすべてをさらけ出したわけではありませんが、そんなピッチ外での戦いも意識しておかなくてはなりません。とにかく、本番は6月なのですから。

さあ残り2ヶ月、残された(予定されている)テストマッチも数えるほどです。我が日本代表チームは、ここからどんな「上乗せ」を、どれだけモノにしていってくれるでしょうか。
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