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フットボールは、前半・後半45分ずつ、計90分で行われます。他のスポーツに比べて、インターバルが極端に少ない点が特徴です。しかし、90分の間、実にめまぐるしく試合の「流れ」が変化するのです。その「流れ」を感じ取ることができれば、フットボールを見る楽しさが倍増することは間違いありません。

「流れ」を見極め、90分という「時間」を「上手に使う」…それが選手たちの成熟度の1つです。例えば、日本代表の戦いぶりは、「速い」と世界中から形容されています。でも、その後に必ず「経験が不足している」とも。

つまり日本チームは、速いことは速いのだけど、いつも同じような速さでボールを回し、いつも走り回っているということです。成熟したチーム(国)からすると、局面局面での日本の速さにはかなわないけれども、それを巧みにいなしたり、一見後手に回っているようで実は隙を狙って鋭い攻撃を繰り出してきたり…そんな奥の深い攻防を仕掛けてくるのです。彼らは実に上手い対応を、試合運びをしてきます。それはもう、ほんとにニクイくらいです。そんな熟練者たち、ツワモノたちを向こうに回して、ワールドカップで日本代表は、どれほど逞しい戦いぶりを見せることができるのでしょうか。

日本代表の試合で、日本の方が、かなり一方的にボールを回し続ける展開がよく見られます。

でも、それは本当に日本がボールを支配をしているのか、それとも相手に「回させられているのか」を見極めてみてください。日本にありがちなのは、その「回させられている」というパターンです。ボールを味方同士で回して回して、いつまでも相手ゴール近くに迫らない、シュートが飛ばない、というのは、むしろ危険な兆候。日本選手の誰かが、ボールの処理を誤ったり、もたついたりする瞬間が必ず出てきます。積極的なパスを試みたのに選手間で意志の疎通やタイミングが合わなかったり、「おい、そんなタイミングでこっちにボールを回されても困るじゃないか!」という戸惑いが生まれる瞬間も出てきます。相手チームは、どこかでそんな日本のミスが出るのを、虎視眈々と狙っているのです。そして、ボールを奪い返したら一気の速攻…日本は窮地に陥ることになります。

ボールを支配続けているのにゴール(得点)が奪えない場合、成熟したチームは、わざとペースダウンし、相手チームに「攻めさせる」ことがあります。それまで押されっぱなしだったチームからすれば、ようやく訪れた攻撃のチャンスです。当然「前がかり」になってしまいます。そうすると、隙もできる、バランスも崩れる…その瞬間、一気にギアをトップに入れてゴールを落とし入れるのです。成熟したチームの懐の深さには、本当に感心するばかりです。
サインプレーもないし、ベンチからの指示でもない、ピッチ内の選手たちの阿吽の呼吸によるギアチェンジ…時間の経過も加味しながら、相手チームの状態も観察しながら実行される、その見事なまでのメリハリは、本当に目を見張らされるほど凄いものがあります(そして私は、そんな瞬間に気がつくと、自然と微笑みが浮かんでくるのです)。

フットボールでは、対戦するチームの間に力の差があっても、90分間一方的に攻め続けて相手にゴールチャンスを1度すら与えない試合展開は、まずありえません。攻められ続けているチームにも、おそらく前半・後半に3度ずつ程度は、ゴールチャンスが生まれるです。そのチャンスを1度でもモノにしたら…攻め続けていたチームにとっては、実に厄介な試合展開になるのです。ますます焦りを生んで、アップセット(番狂わせ)という結果が生まれる可能性が一気に高くなります。だから、どんな強豪チームでも、ゴールが取れる時に取っておく、これは「鉄則」なのです。

どんな競技でもアップセットは起こります。それがスポーツの醍醐味の1つでもあると思うのですが、なかでもフットボールは、特にスリルのある、結果が見えない競技の1つです。どんなに力の差がある対戦相手であろうと、「やってみなきゃ、わからない」。ロスタイムに、試合終了寸前のわずか数十秒前に劇的なゴールが、逆に、悔やんでも悔やみきれない失点(相手ゴール)が生まれるのも、フットボールならではの醍醐味でしょう。だから、そんな魅力に取り付かれる人々が後を絶ちません。「時間を使う」「時間を使わせる」競技だからこその醍醐味です。

「サッカーは得点が入る時はアッという間で、いつ得点が入りそうなのか全然わからなくてつまらない」という声を聞くことがあります。
フットボール観戦では、実は、ゴールが生まれる10秒前からのプロセスが、一番面白いのです。シュートがゴールネットに吸い込まれていく10秒前です。これはゴールに結び付きそうだぞ! という予感と目線で、試合を見ていただければと思います。その予感が的中したりすると、間違いなく、とっても幸せな気分に浸ることができるでしょう。それが日本チームのゴールであれば、なおさらです。

ワールドカップでは、そんなシーンに1つでも多く遭遇できることを、期待しましょう。ぜひ、スタジアムで、TVの前で、90分のドラマに見入ってください。そうすれば必ず、「このチームは自分にとって面白い」というチームが現れてくることでしょう。フットボールは、チームごとに間違いなく個性と独創性があります。自分にフィットするチームを見つける楽しさもまた、フットボールの醍醐味に違いありません。

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