マルチメディア・プロデューサーズ・ユニオン(MPU)は、設立7年目に突入しました。
この間、マルチメディア業界、デジタルコンテンツ業界を取り巻く情勢の変化には著しいものがあり、その中でMPUとして何ができるのか、何をしていくのかということを常に考えてきました。
また、各方面からMPUに対して、数多くの、様々なご要望もいただいてきたところです。皆様からいただいたご要望は、次のように集約できるかと考えます。
1.作品の質・信頼性を保障するプロジェクトの実現
2.プロフェッショナルなスタッフによる制作開発
3.リーズナブルで客観性のある制作予算・コスト管理
4.安心してプロジェクトを任せられる人材の待望
5.秩序とルールの熟成への期待
そこで、皆様からご賛同をいただいているMPUの「個人参加による緩やかな機構」という形は崩さず、発注側・受注側双方とも、満足のいく、納得のいく形でタイトルづくりが営まれるシステム実現と、業界の安定と発展のために、どういう機構が作れるのかということについて検討を重ねた末、「プロデューサーズ・ギルド」の編成という考えに至りました。
「プロデューサーズ・ギルド」は、安心して仕事を任せられる機構やシステムの実現に対するご要請に応えられる機構として編成するものであり、MPUの中の実働組織という位置づけになります。
■プロデューサーズ・ギルドの目的
プロデューサーズ・ギルドが目指すところは、次の4点です。
1.相互に安心できる機構・環境の整備
2.安定した、秩序あるデジタルコンテンツ業界の構築
3.明確に存在しない、明確に意義付けられていないプロデューサーを確保する
4.デジタルコンテンツ制作のルールづくり
上記3については、日々進化を遂げるデジタルコンテンツ制作の技術に対して、自己成長していくプロデューサーでなければならない、という意味も含まれます。プロデューサーはまだまだ不足していますが、お互いのプロフェッショナルな仕事を通して、優秀なプロデューサーを養成していこうということが根底にあります。
■プロデューサー、ディレクターの登録と5つのディビジョン
プロデューサーズ・ギルドは、プロデューサーやディレクターを登録いたします。
プロデューサーズ・ギルドには、次の5つのディビジョンを設けます。
1.インタラクティブ・ディビジョン
2.デジタルパブリッシング・ディビジョン
3.インフォメーションネットワーク・ディビジョン
4.データベース・アーカイブ・ディビジョン
5.ネットワークビジネス・ディビジョン
登録されたプロデューサーは、この5つのディビジョンのいずれかに所属していただくことになります。もちろん複数の所属も可能です。
各ディビジョンには「Senior Producer」を1名置きます。
また、複数ディビジョンによる協同プロジェクトも可能と考えています。
プロデューサーズ・ギルドへの登録をご希望になる方は、経歴書、実績表、登録を希望するディビジョンを明記した申請書に、プロデューサーズ・ギルドのメンバー2名以上の推薦を添えて、ご提出いただきます。
登録が承認されれば、登録契約書等にご署名いただき、メンバー登録証やメンバーカードを交付します。
もちろん、プロデューサーズ・ギルドの登録メンバーになっていただいたからといって、プロデューサーズ・ギルドが、その方の行動をなんら制約するものではないことを、明言いたします。
また、プロデューサーズ・ギルドに登録することについて、単なる営業的なご期待をお持ちいただくと、残念ながら、プロデューサーズ・ギルドの主旨と懸け離れたものになってしまうと思います。ストレートな表現になりますが、生活基盤は各自の責任において確保していただき、プロデューサーズ・ギルドに登録していただくことで、さらに大きなプロジェクトのプロデュース行っていただきたいというのが主旨です。
既に幾つか、プロデューサーズ・ギルドには、大きなプロジェクトのプロデュースのご依頼をいただいています。1名のプロデューサーだけでは到底こなし切れない、こうした大きなプロジェクトを、プロフェッショナルな者同士で推進していきたいと、考えています。
同時にまた、プロデューサーズ・ギルドの登録メンバーの方は、プロデューサーとしての技量が問われることにもなります。
何か問題が生じた場合には、プロデューサーズ・ギルドとして責任を持ち、問題対処に当たりますが、担当ProducerやSenior
Producerには、民法上の権利義務や責任が発生します。
プロデューサーとしての自覚と責任をお持ちのプロデューサーの方々に、ぜひ登録していただきたいと考えます。
■プロデューサーズ・ギルドの業務
プロデューサーズ・ギルドの業務は、「依頼された物件に対して、プロデュース業務を行う」ことです。
ただし、これまで日本では、プロデュース業務だけを依頼されるということは、あまりありません。
そこで、ご要請があれば、制作開発チームを編成し、プロデュース業務とともに、制作開発業務も担当させていただく場合もあります。また、プランニング業務やコンサルティング業務をお願いされる場合もあると思いますので、それらの業務に対しても、ご要請があればお応えいたします。
ご依頼をいただいた物件に対しては、登録メンバーの中から「担当Producer」が指名され、これをSenior Producerが管理します。担当ProducerとSenior
Producerは、制作スケジュールと制作予算書を作成し、責任と自覚を持って、プロデュース業務を進行いたします。
なお、重要な障害や問題点が発生した場合には、プロデューサーズ・ギルドが責任を持って対処することとなります。そのためにも、担当Producerは日報を作成することが義務づけられ、どういう顔ぶれで、どういうミーティングが行われたかということも含め、進行状況等を報告します。
担当ProducerやSenior Producerには、所定のプロデュース費を受け取っていただくこととします。
担当Producerのプロデュース費は、原則として総制作費の7%、Senior Producerのプロデュース費は、原則として総制作費の3%、そして、プロデューサーズ・ギルドのプロデュース管理費として、原則として総制作費の3%を頂戴したいと考えています。
また、プロデュースに加えて制作開発も担当させていただいた場合については、プロデューサーズ・ギルドとしての単価表を設定し、それに基づいて積算します。
なお、プロデューサーズ・ギルドが頂戴するプロデュース管理費は、プロデューサーズ・ギルドの運営費用と、何か問題が起きた場合に対処するための費用です。さらに将来の構想と目標としては、登録メンバーの方のための保険制度や、デジタルコンテンツ制作を支援するファンドが構築できればと考えています。
プロデューサーズ・ギルドは、特定の人間の利益追求を図るものではありません。
また、そのようなことができないような仕組みを作っています。
さらに、プロデューサーズ・ギルドは、「ギルド」や「中立的機構」といった言葉に名を借りた営業システムではありませんし、登録メンバーへ仕事を斡旋する組織でもありません。プロデューサーの皆さんは、それぞれ日々の業務によってご自身の生活基盤を確保していただくことを前提にしています。
このようなプロデューサーズ・ギルドについて、大きなご関心をお持ちいただいて、ご支援、ご出資を申し出て下さっている方も既にたくさんいらっしゃいます。たいへんありがたく存じます。
ご支援やご出資をお考え下さっている方々に対しては、賛助会員システムの導入を検討中です。
以上、プロデューサーズ・ギルドのアウトラインを簡単に説明いたしました。
MPUはこれまでどおり、オープンで緩やかな括りによって構成される相互扶助、相互協力団体として、従来どおり活動を続けます。プロデューサーズ・ギルドは、MPUの一つの精神のより昇華された、より具現化された形として、編成されるものであります。
私自身、MPUというフレンドリーな、オープンな集まりを、皆様のご理解とご賛同によって、長く継続していくことができていることについて、とても幸せに感じております。そのMPUを解散したり、プロデューサーズ・ギルドのへ方向転換していくということは一切考えておりません。その点は最後に明確に申し上げたいと思います。
(1999年6月3日)
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