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日本のフットボール(サッカー)ファンの間では、長らく、日本のTV中継のお粗末さが話題(問題)になっています。海外のTV中継と比べて相当未熟だ、というのです。近年はBS放送やCS放送で、海外リーグの試合もふんだんに見られますし、ワールドカップをはじめ、各国代表同士の国際試合も昔とは比較にならないほど数多くTVで観戦することができます。それらと比べて、非常に見劣りするということです。

加えて、昨年あたりから、2002年ワールドカップのホストカントリー(開催国)ということで、日本で行われる国際試合(国際Aマッチ=各国フル代表同士の対戦)が海外でもオンエアされる機会が多くなり、海外のメディアからも「この放送ではワールドカップは行えない」などと厳しい批判も寄せられています。

もっとも、ワールドカップ本番は、海外の専門スタッフが中継を担当するので、世界の皆さんから「未熟だ」「お粗末だ」という批判を受けるような映像にはならないと思いますが。

で、私個人の見解としては、ズバリ、日本のTV中継スキルは非常に劣っていると考えざるをえません。残念ながら。
細かく言い出すとキリがないのですが、大きなところでは、まず、カメラが引き過ぎていて、臨場感がまったくありません。もっとカメラを選手に寄せてくれないと、迫力ある映像にならないのは当然のことです。今の中継スキルでは、選手が「米粒」のように見えると言われても、仕方がない感じがします。

確かに、フットボールは、広いフィールドで、しかも大きな素早い展開が繰り広げられる競技であり、ボールに触っている選手だけをカメラがとらえていては、試合全体を見ることができません。ボールに触っている選手だけに集中せず、ある程度広いエリアをとらえてくれることが必要です。しかし、いくらなんでも、選手が米粒のように見えるような映像では、迫力もスピード感も伝わらないのではないでしょうか。
日本のTV中継は、カメラが選手にある程度寄っていると、次の展開(ボールの動き)を追えない恐れがあるために、安全策として、あのような引いた映像にしてしまっているのだと思います。その思慮もわかるのですが、そんな安全策をとらざるをえないことについて、要は中継スタッフがフットボールをよく理解できていないのでは? と言われても仕方ないかもしれません。
適度に選手に寄って迫力も伝えつつ、ボールが動いたら(動きそうになったら)素早くその先を読んでフレームアウトしないように試合を追いかける・・・その両面に対応できなくては、フットボール中継は迫力あるものにはなりません。海外のTV局ができていることを、日本の中継スタッフにできないとは思えないのです。

もう1つ、これも海外メディアからしばしば指摘されることで、私も同意するのですが、「プレーが止まった」と中継スタッフが考えた瞬間に、無用に、選手のズームがインサートされることです(しかも、ついさっきのプレーに直接関係ない選手のズームがインサートされることも、しばしばあります)。米粒のような映像から、一転、無用に選手のズームがインサートされると興冷めしてしまうし、TV中継を観ている側からすると、「プレーが止まった」というのは中継スタッフの勝手な判断であって、無用なズームがインサートされている間に、試合の方はさっさと、どんどん次の展開へと状況が動いてしまっていて試合を追いかけられないじゃないか、というジレンマが生じるケースが、頻繁にあります。

日本では、日本代表の試合は、スポーツ番組として最も高い価値の番組(=最も高いスポンサー料が付けられる番組)のひとつとなっています。その一方で、国内リーグ戦・Jリーグ中継のTV的な人気、価値は、相変わらず低いままです。Jリーグそのものの人気とかJリーグの試合レベル・試合内容にその要因があるという指摘は否定できるものではありませんが、同時に日本のTV中継の迫力のなさ、臨場感のなさも、その要因のひとつに考えられるのではないか、という意見すらあります。
いくつかのTV局やクルーは、少しでも改善しようと工夫を試みてくれている様子も感じられます。今後に期待したいとも思いますが、ワールドカップでの海外スタッフの中継スキルを、ぜひ参考にして欲しいものだと思います。
また、普段はTVでフットボール中継をご覧にならない方々も、ぜひ、海外スタッフの試合中継を観て、本場の(=国際標準の)TV中継の迫力と素晴らしさを体験していただきたいと思います。

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