2002.6.15
  「青い波の情熱」の後押しで決勝トーナメント進出
 

6月14日、日本はチュニジアを2-0で下して、期待どおりH組1位で決勝トーナメント進出を決めてくれました。本当にホッとしました。穏やかな気持ちです。

チュニジア戦から一夜明けて、楽な試合展開だったという論調も一部に見られますが、決してそうではなかったと思います。

2nd half(後半)開始直後に見せたベンチワーク(選手交替)は、素晴らしいものでした。

私が1st half(前半)に気になっていたことは3つ。1つめは、サイドアタックの不足。2つめは、トップの動き出しとスペースを突く動きをもっと増やしたいこと。3つめは、ベルギー戦とロシア戦で大活躍をした稲本のプレー。不調というわけではないけれども、かなり違う感じ。トルシエ監督は、1つめの件に関しては、右アウトサイドに市川を投入、前線には柳沢に替えて森島を投入、一気に2人を替えてきました。しかも、稲本を下げ、スタメンで右アウトサイドに入っていた明神を中盤の底に移してバランスをとってきたのです。この選手交替がズバリ的中して、日本は勝利を引き寄せました。9日のロシア戦での終盤の選手交替も非常に的確だったと思いますが、さらに素晴らしいベンチワークです。最後には中田英寿に替えて小笠原まで起用してみる采配ぶりでした。

2勝1引き分けの勝ち点7ポイント…堂々たる勝ち抜けです。

今から言うと怒られそうですが、1位でのグループリーグ突破もあるかな、と少しは思っていました。逆に、最下位の可能性も同じくらいあると思っていたので、怖くて(?)とても口には出せなかったのです。2位で十分なのでとにかく突破してくれれば…というのが、正直な想いでした。初戦の4日のベルギー戦を観た後では、その想いがますます強くなりました。それなのに、本当に1位で突破してくれるなんて、少し驚きです。

また、長らくこれまでの日本チームには明らかに欠けていた、試合の流れや相手の出方を見図りながらのチェンジ・オブ・ペース、臨機応変の戦い方が、今回のワールドカップでは少しできるつつあることが確認されるのも、とても嬉しく感じています。「世界」という物差しの中で、着実に進化していく姿を見続けていくことができるのも、サッカーならではの楽しみです。


さあ、決勝トーナメントは18日の15:30からトルコと対戦します。トルコもワールドカップには2度めの出場で、決勝トーナメント進出は初めてです。ですが、ヨーロッパ各国のクラブで活躍する選手が何人も居ますし、ヨーロッパのクラブチームによるカップ戦「チャンピオンズ・リーグ」でも、近年におけるトルコのクラブチームの躍進ぶりは目覚ましいものがあります。そんな国に対して、私たち日本チームのトータルフットボールがどこまで通用するのか、思いっ切り戦って欲しいと考えています。

もし、トルコを破ることがあればベスト8…22日の20:30からスウェーデンVSセネガルの勝者と対戦することになります。

私たちの日本チームがどこまで上って行けるのか、これまでと同じく声援と情熱をこめて、見守りたいと思います。


グループリーグでは、フランスに続いてアルゼンチンも姿を消してしまいました。期待していたポルトガルも、姿を消しました。

アルゼンチンは、初戦の2日のナイジェリア戦が素晴らしいパフォーマンスで、優勝候補と思ったのですが、7日のイングランド戦、12日のスウェーデン戦と、試合を観た感じでは、チーム全体のテンションなりコンディションなりが、上がって行きませんでした。もちろん、チーム戦術に対する疑問もあります。3トップ気味にしたウイングからの攻撃にこだわり過ぎていたようにも思いますし、ボールの落ち着かせ所がしっかり定まっていない感じもしました。特に勝利が義務だった最終戦では、百戦錬磨のスウェーデンに対して、あの程度のパフォーマンスでは、撃破は困難でしょう。

(ボールの落ち着かせ所がしっかり定まっていない、ということについては、グループリーグを辛うじて突破したものの、まだピリッとしないイタリアにも同様に感じていることです。)

ポルトガルも、2000年の「ヨーロッパ選手権」で見せてくれた素晴らしいパフォーマンスが、影を潜めてしまっていました。ワールドカップ前のテストマッチではほとんど感じていなかったのですが、わずか2年の間にディフェンスラインの衰えが際立ってきてしまったと見えたのは、私だけでしょうか。

この点はフランスにも同様です。テュラム、デサイー、ルブフに代表される強固なディフェンスと迫力あるオーバーラップ(攻撃参加)が、2000年の「ヨーロッパ選手権」優勝を頂点として、わずか2年で衰えを露呈してしまったことが、敗退の大きな原因と思っています。フランスの場合は、実はワールドカップ前のテストマッチを何試合か観た段階で既に不安を感じていたのですが、これからコンディションを上げていくのだろうと、私は深刻な危機とは思っていなかったのです。


世界のフットボールは、これだから怖いですね。

そうそう、ワールドカップで上位に進出する国には、必ず「新星」の存在があります。それまで国際的には全くと言っていいほど知られていなかった「新顔」の選手の出現が不可欠なのです。たとえスター選手、ビッグネームの宝庫であっても、その財産だけでは生き残っていけない…それがワールドカップなのです。(了)

   
 


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