2002.11.29
  FWだけではない・・・センターバックとサイドバックの人材不足
 

11月20日に行われた日本代表VSアルゼンチン代表の国際Aマッチを、皆さんはどのようにご覧になったでしょうか?
長年見続けてきた者からすると、確かに日本代表の進化は確認できたのですが、それでも、アルゼンチン代表との「差」は、まだまだ大きなものがあるなあ、という感想を持ちました。でも、焦らず、しかし休むことなく、絶え間ない急速な進化と成長を続けていくしかありませんね。まあ、それを見続けていくという大きな楽しみであるのですが。

アルゼンチン代表との大きな「差」の1つとして、パススピードの差に気づかれた方も多いのではないでしょうか。
日本の選手たちも、Jリーグ誕生の頃から比べると、パススピードはかなり速くなっていると思います。それでも、顔ぶれとしてはフルメンバーに近かったアルゼンチン代表の選手たちと比べると、まだまだスピードの差は明白でした。

さて、日本には得点力のあるフォワード(FW)が不足していると、長年言われ続けています。アルゼンチン戦でも、高原直泰の実に惜しいシュートがありましたが、結果的にはノーゴールで終わってしまいましたし、試合内容もゴールの可能性を感じさせる雰囲気がイマイチだったのは事実でしょう。今年のワールドカップでも、日本代表があげた5ゴールのうち、FWがあげたのは鈴木隆行の1ゴールだけでした。
もちろん、得点をあげる(フィニッシュする)仕事はFWだけの仕事ではありません。誰がフィニッシュしてもよいわけです。でも、トップに張っているFWがフィニッシュ能力高い選手であることは世界中どこに行っても当然のことですし、フィニッシュ能力の高さ・強さを感じさせないFWは、相手チームのディフェンダーにすると怖さを感じない、対処しやすいFWということになるでしょう。
もっとも、日本のFWは、スペースメイキングや動きの質の点では優れたものを持っていますので、一概にゴールが少ないという点だけをとらえて、日本のFWは力不足とは言えないと思います。あくまで、フィニッシュ能力(攻撃の仕上げ=相手ゴールにボールを送り込む、叩き込む能力)の問題です。その点においては、確かに日本のFWは物足らないと言われてもやむをえないかもしれません。

でも、そうした点はFWだけのことでしょうか?
私は、日本代表チームは、FWよりももっと重大な課題を抱えていると思っています。サイドバック(CB)とセンターバック(SB)の人材不足です。

先日のアルゼンチン戦でも、右サイドバックの名良橋晃(鹿島アントラーズ)が何度も右サイドを駆け上がって(オーバーラップして)攻撃参加した姿が印象に残っている方もおいででしょう。確かに、名良橋の積極的な姿勢は目につきました。が、せっかく右サイドをえぐっても、その後のクロスの精度と工夫、ミドルシュートがあの程度では、フィニッシュにつながるプレーにはなりません。また、10月のジャマイカ戦と同様、オーバーラップした裏のスペースを突かれて、度々ピンチを招いてしまっていました。積極的な攻撃参加をしているのだからそれくらいのリスクは折り込み済みという方もおられるかもしれませんが、フットボール(サッカー)は相手との攻防一体のスポーツです。サイドバックには、そうした事態にも対応する戦術眼やペース配分や存在感(威圧感)が求められるのです。
そうした点において、日本のサイドバックはどうでしょうか? 実際に、ジャマイカ戦とアルゼンチン戦でサイドバックに起用されたのは、右が名良橋と山田暢久(浦和レッズ)、左が服部年宏(ジュビロ磐田)と中西永輔(ジェフ市原)です。それぞれに良い選手ですが、この他に日本代表チームに選ばれそうな選手を見渡してみると、確かに良い選手も結構多く居るのですが、イマイチの感は否めません。何も、ブラジル代表のカフーやロベルト・カルロス並みの選手とは言いませんが、もっと若くてイキのいい、そしてスケールの大きいサイドバックの出現を期待したいところです。

さて、センターバックです。ジャマイカ戦とアルゼンチン戦では、2戦とも秋田豊(鹿島アントラーズ)と松田直樹(横浜F・マリノス)がフル出場を果たしました。両選手とも、Jリーグでは屈指の強さと高さを持ったセンターバックです。でも、国際的にも日本の弱点の1つがセンターバックであることは、もはや通説になっているようです。Jリーグでは屈指の強さと高さといっても、国際レベルではまだまだ。それに、1対1の対応能力、相手の攻撃に対するポジショニングや読みや対処の仕方については、アルゼンチン戦を見ていても、ウ〜ンこれではなあ・・・というシーンが数多くありました。秋田と松田の他にも、ワールドカップに出場した森岡隆三(清水エスパルス)や宮本恒靖(ガンバ大阪)も居ますが、ざっと見渡してみても、代表チームに呼んで欲しいと思わせる選手が居ません。センターバックはサイドバック以上に人材不足と言わざるをえないかもしれません。

今、日本代表(A代表)は、2004年のオリンピック(U-23)を目指すU-21代表や、来年のU-20ワールドユース選手権に臨むU-19代表との融合をする前のチームです。現在のU-21やU-19と融合した時、若い世代からA代表に抜擢される選手が現れて欲しいと思います。
先日の試合でもフル出場した、アルゼンチン代表のディフェンスラインの中心選手であるサムエルは24歳。彼はイタリアのローマでも不動のセンターバックとして活躍していますが、ローマに移籍してきたのは2000年の夏、まだ若干22歳でした。その当時は中田英寿もローマに所属していたのですが、それまで欠陥のあったローマのディフェンスラインに芯が通ったかのようなサムエルの強固なディフェンスとパフォーマンスに、たいへん感心した記憶があります。日本でも、そんな選手の出現を期待したいものです。(了)

   
 


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