2003.1.25
  さらにステップアップを期待! 完全移籍の中村俊輔
 

中村俊輔のイタリア・セリエAのレッジーナへの完全移籍が発表されました。今シーズン、横浜F・マリノスからのレンタル移籍でレッジーナでプレーしていた中村俊輔ですが、これで本当の「セリエA戦士」となったのだと思います。
やはりレンタル移籍だと、クラブも、他の選手たちも、サポーターも、「お客さん扱い」になってしまいがちです。プレーする上では完全移籍だろうとレンタル移籍だろうと関係ないとは言え、本当の海外移籍とは、やはり完全移籍だろうと私は思うのです。ましてや遠く離れた日本の選手です。イタリアにせよヨーロッパ全土にせよ、本当に海外(世界各国)のクラブでプレー(チャレンジ)していくつもりなのかどうか、それが完全移籍という形で意思表示され、周囲にも認知されるのだと思います。

実は、レッジーナへの完全移籍が成立するのかどうか、少し心配していました。まず、4億円以上もの移籍金をレッジーナが用意できるのだろうかという点。
それ以上に、レッジーナはセリエB(2部リーグ)への降格争い真っ只中にいる状況で、もっと言えば、降格の有力候補である状態で、中村俊輔を完全移籍で獲得するのかどうかという点がありました。確かに中村俊輔は、ちょうど半分の試合を終えた今シーズン、既にチームで最も多い5ゴールをあげています。ですが、降格有力候補になってしまっているチームは、普通、分厚く守って一発のロングボールによるカウンター、という戦い方にどんどん陥っていく傾向が非常に強く、いくら中村俊輔が評価されていても、中村俊輔を必要としないチーム戦術になる可能性が高いからです。
ともあれ完全移籍が成立して、一安心というところです。

でも、降格してしまうレッジーナへ完全移籍してしまったら逆に困るのでは?と心配の方もおられるかもしれません。
その点は心配無用と思います。良いプレーや良いパフォーマンスを続けていれば、他のチームからのオファーが必ずあります。既に中村俊輔には、幾つかの上位チームが注目していると聞きます。それもあってレッジーナは、仮に降格することがあっても構わないという前提で、中村俊輔を完全移籍で獲得したのだと思われます。レッジーナにしてみれば、今シーズン終了後に中村俊輔を他のチームに移籍させる(要するに、他のチームに売る)ことで、さらに大きな金額の移籍金を得ることができるのですから。
それだけ、前半戦の中村俊輔のプレーに注目が集まっている、レッジーナが横浜F・マリノスへ支払う移籍金以上の金額で中村俊輔を獲得したいチームが必ず現れるという確証がある、ということでしょう。

とは言え、中村俊輔にもまだまだ多くの課題があるように思われます。
確かに5ゴールをあげていますが、PK(ペナルティキック)が4点、FK(フリーキック)が1点です。まだ流れの中からのゴールはありません。
もちろん、セリエAにデビューしていきなりPKを蹴らせてもらって、それを全てノーミスで決めているのですから凄いことです。FKにしても、中村俊輔の得意芸を満天下のファンや関係者に見せつけることができました。また、クロスボールなどのキックの正確さには、既に高い評価が与えられていると思います。
ただ、試合の中でリズム良いパス回しを生み出せているかどうかは、まだまだ疑問です。シンプルにスピーディにボールをさばいていくプレーが、もっと必要ではないでしょうか。もっとスピード豊かな攻撃(速攻)の組み立て・演出も、望みたいところです。無用に相手チームにボールを奪われるシーンが少なくないのも、気になります。それから、スペースへの走り込みや動き出しが、まだまだ不足しているように思われます。単に運動量のことだけではなく、緩急メリハリのついた動き出しです。中村俊輔自身のこうした点が改善されていった時、そのイマジネーション溢れる攻撃力がもっと生かされ、結果もついて来るのではないでしょうか。
中村俊輔には是非、インターナショナル・プレイヤー(国際的なプレイヤー)としての階段を昇っていって欲しいものです。

これまで海外のクラブへいきなり完全移籍で移籍したのは、中田英寿と小野伸二くらいでした。
他の選手たちはほとんどがレンタル移籍。しかも、チームが2部に降格した場合は日本のクラブに戻るという条件付きの場合もあったようです。日本のクラブ(あるいは選手のマネジメント会社)からしてみれば、大事な選手の商品価値を守りたいということだと思いますが、それでは本当の移籍とは言えないでしょう。選手本人にしてみればたいへんかもしれませんが、2部リーグでもプレーすることも厭わない、そうした意志や覚悟があってこそ、良いプレーや、各方面から注目されるパフォーマンスが生まれてくるものではないでしょうか。そして、よりレベルの高いクラブへ、より大きなチームへ移籍していく…勝手な言い分かもしれませんが、そうしたステップアップを私たちは見守っていきたいと思います。

さて、いよいよ、ドイツのブンデスリーガ(ドイツ1部リーグ)ハンブルガーSVに移籍した高原直泰のデビュー戦です。シーズン途中の移籍ですが、高原は完全移籍でブンデスリーガに挑みます。
Jリーグ得点王を獲得した後、昨年暮れの天皇杯全日本選手権と、今年に入ってのドイツでの練習試合と、ノーゴールが続いていることに少し不安も感じますが、できるだけ早いゴールを期待したいものです。

また、イングランドのプレミアリーグのサンダーランドへの移籍目前かと思われていた戸田和幸が、急転直下、トットナムへの移籍が決定しました。
トットナムは、昨シーズンのチャンピオンチームで稲本潤一が所属していたアーセナル、中田英寿獲得の噂が絶えないチェルシー、現在稲本潤一の所属しているフルハム、三都主アレサンドロ獲得寸前までいったチャールトン、そしてウエストハムとともに、ロンドンにある名門クラブです。実は、稲本がプレミア初ゴールを決めたのがトットナム戦でした。
完全移籍ではなくレンタル移籍ということですが、昨年のワールドカップの日本代表チームにおける中盤の底のキーマンであった戸田の、トットナムでの挑戦も楽しみに見つめたいものです。(了)

   
 


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