2003.2.2 【インタビュー】
  今後の成長が楽しみな、高校生年代
  LADYWEB それは監督の意識、指導が変わったということですか?

KOH先生 指導者には、もともとそうあるべきだっていうのがあると思うんですよね。でも、高校サッカーはトーナメントによる一発勝負ですよね。学校としては勝たなきゃいけないという意識が強く出てしまいますし、しかも高校は3年生で卒業ですから一貫した指導ができない。そのなかで、「勝つサッカー」っていうか、それを優先してしまう。さっきもいいましたように、体力にまだバラツキがある若い年代では、ドッカーンと蹴って走ってボコン、ズドンが、勝ちやすいわけです。だからどうしても、そういうサッカーを指向してしまうっていうのが、今までの日本サッカーの1つの弊害だったんです。
確かに高校サッカーは、Jリーグができる前は、あるいはJリーグの初期の頃も、選手のひとつの成長過程として、高校サッカー出身の優れた選手がたくさんいます。でも、そういう役割が、Jリーグができて少し変わらざるをえなかった。で、いいサッカーもし、体力的にも鍛えられたチームっていう風にならざるをえないし、なってきていると思うんです。そういう面では、質が変わってきた、底上げされてきたとは思います。

Jリーグにはユースチームと呼ばれる下部組織があります。Jリーグのユースチームだけの大会もあります。ガンバ大阪とかはユースチームが以前から大変強いんですよ。じゃ、ガンバ大阪ユースと国見高校が試合をやったら、どっちが勝つかっていったら、たぶん、国見高校の方が優勢だと思います。じゃ、Jリーグの各クラブのユースチームは弱いのかっていったら、そうじゃなくて、指向しているサッカーが違うということです。

Jリーグといっても、J1、J2合わせても28チームしかありません。Jリーグは規定として、ユースチームも必ず持つことというのがありますが、プロのJリーグのクラブのユースチームって、やっぱり28チームしかないわけですよね。それよりも、全国には高校が何千校もあって、歴史もあるわけですが、じゃ高校サッカーの選手の育てかたはどうかといった時に、率直にいうと、高校サッカーの育てかたは、あんまり専門的でもないし、あえていえば近視眼的な選手の育てかただから、将来、卒業後に選手がさらに成長していける素地を養うことができているかというと、どうでしょうか。高校サッカー時代には有名選手としてマスコミなどでちやほやされて、なおかつ凄い選手に成長していったという例は、実はあまり多くないじゃないですか。それは、やっぱり指導方針だと思うんです。指導者がいけないといっているのではなくて、高校サッカーという特質の。で、そんなんじゃやっぱりいけないよねと、指導者たちも認識を改めてきたところがあるんではないでしょうか。もともと、そういう気づきを持っていた指導者も多いとは思うんですが、やはりワールドカップが開催されたっていうことは、それだけ大きな意味があることで、Jリーグというプロができて、ワールドカップに出場して、世界を見た時に、日本中の指導者の間に、より選手の育成を意識するようになったのではないでしょうか。日本のサッカーの大きな変貌だと思います。

もう一つ、高校サッカーは、さっきもいいましたように、トーナメントです。日本は、「高校○○選手権」というのが結構好きですよね。でも、サッカーにおいては、試合数をたくさんこなすことが重要な若い年代にトーナメントっていうのは、世界的にはふさわしくないと言われているんです。それは、全くその通りなんですね。で、今年からその改革が始まろうとしています。高校のチームとJリーグのクラブのユースチームを混ぜて、地域でリーグ戦を行おうという試みです。将来は、日本全国でのリーグにしようということなんですが、とりあえず地域ごとにやろうということです。Jリーグのユースチームと高校のチームとが、もっと試合をして、ただ勝った負けたじゃなくて、お互いのレベルアップをしていく。お互いで刺激し合って、いいところを取り入れていこうという試み、改革なんです。そういうのが始まるので、これからのユース年代は楽しみです。
ユース年代の育成をしっかりしないと、ワールドカップに出場することも、ワールドカップで活躍することもできませんし、なによりいい選手が育たないですよね。だから、非常に大事な改革です。2002年のワールドカップが終わって、日本サッカー協会の施策として、まずそこから手をつけ始めてきたというのは、たいへん素晴らしいことです。

高校サッカーは学校体育です。クラブは社会体育といいます。実は、日本においては、今まであまり意識されてこなかったことなんですが、日本ではスポーツといえば学校体育が当たり前できたわけです。でも、世界的に見て、学校体育が中心の国にスポーツ大国はありません。やはりクラブなんです。Jリーグのやろうとしていることは、単にサッカーを強くするということではなくて、そういうことの転換でもあるわけです。日本は、学校体育というものが伝統も歴史もあって、学校体育の方が一般的にもわかりやすい。もっといえば、スポーツといえば学校体育だった。でも、これからは、学校体育と社会体育の両方をしていこうということです。
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