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マルチメディアタイトルの特性(その1)
マルチメディアCD入門(1995年11月発行):竹内 好
■マルチメディアタイトルの特性−ジャンルと方向性

 「マルチメディア」がひとつのトレンドワードとしてマスコミ等で頻繁にとりあげられるようになってきた。そのような風潮の中でマルチメディアタイトルに対する関心も高まりつつある。例えばCD-ROMタイトルを専門に扱うショップなども増えてきているようだ。このように新しいメディアとして注目を集めているマルチメディアタイトルだが,それではどこがこれまでの既存のメディアと違うのだろうか。
 機能的なメリットとしてその容量の大きさやすぐれた検索性などがあげられるが,マルチメディアタイトルがこれまでの既存のメディアと違う最大のポイントはその「インタラクティブ性」にある。「Interactive」という言葉は「対話性のある」「相互作用がある」と訳されることが多いが,ここでの「対話性」また「相互作用」とは「コンピュータとのやりとり」ということになるだろう。
 これまでの既存のメディア,例えば本やテレビにおいて,ユーザーは情報の送り手側から一方的に与えられたものを受け取ることしかできなかった。そこではストーリー展開などはユーザーが受け取る前にすでにできあがっていて,ユーザーがそのストーリー展開に納得がいかなくてもそれをかえることや疑問を送り手に投げかけることはできない。
 ところがマルチメディアタイトルが提供するのはユーザーとの「対話」や「相互作用」によって生まれる「マルチストーリー」であり「マルチエンディング」の世界である。例えばここにCD-ROMに収められたひとつの物語があるとしよう。ユーザーはそのストーリーのオープニングや途中において物語に参加することが求められ,またそうすることによってストーリーが展開していく。つまり,CD-ROMにおいてはユーザーの参加意識を獲得しなければ話は進んでいかないし,また獲得するためにユーザーのモティベーションを高めるような工夫も必要となってくる。

 コンピュータ技術の進化とともにマルチメディアタイトルもその表現の幅を広げてきた。フォトCDやビデオCD,また各種ゲームプレーヤーも,それぞれのハードの普及に伴ってリリースされるタイトルも数,内容ともに充実しつつあるが,マルチメディアタイトルとして今最もメジャーな存在なのがCD-ROMである。(財)マルチメディアソフト振興協会編『マルチメディア白書1995』によると,1993年1年間で日本において約4,000本のCD-ROMがリリースされ,その市場規模は1,553億円にも成長したということである。
 ここではまずマルチメディアタイトルの代表としてCD-ROMタイトルを取り上げ,その方向性やジャンル,構造について探ってみたい。

 ではCD-ROMタイトルとしてどのようなタイトルがリリースされているのだろうか。大きく分けるとゲーム,エンターテインメントを中心にしたホームユース系,教育を主眼としたリファレンス系,また様々な意味で関心を集めつつあるアダルト系のタイトルがある。
 まず,ゲーム,エンターテインメントを中心としたホームユース系は『世界CD-ROM総覧1995/VOL.8』((株)ペンローグ)に収録されている国産CD-ROMタイトルの中でも約80%を占める。マルチメディアタイトルの特徴である「インタラクティブ性」とCGテクニックを大いにいかし,単に「ゲーム」というジャンルではくくれないほど内容の濃いタイトルが多い。中には「インタラタティブ・ムービー」と呼ばれるような奥行きの深いものもある。教育を主眼としたリファレンス系のタイトルは,CD-ROMの容量の大きさとその優れた検索性をいかし,データベースとして大いにその機能を発揮する。また「インタラクティブ性」を「学習」と結び付け,楽しく学んでいこうという「エデュテインメント」(Edutainment=Education<教育>+Entertainment<娯楽>)という新しいジャンルも生まれた。
 また,「Macworld Expo/Tokyo」において特別に設けられた「アダルトコーナー」の盛況ぶりは記憶に新しい。様々な話題を呼んでいるアダルト系のCD-ROMタイトルだが,内容としてきわどさだけを追及したものだけではなく「Yellows2.0」のように芸術的な香りを漂わせ話題になった作品もある。倫理基準の設定など整備されなければならない点も多いが,かつてアダルト系ビデオがビデオデッキの普及に影響を与えたように,CD-ROMにおいてもハード普及の大きな牽引力になるのではないかという見方もあるようだ。
 大きく分けると以上のようなジャンルのCD-ROMがリリースされているが,ここでは最近話題になったマルチメディアタイトルを,その特徴からさらに次のように分類してみた。

 ○Virtual Trip〜仮想空間を旅する
 ○図鑑,データベース〜検索を楽しむ工夫
 ○Edutainment〜教育とマルチメディア
 ○新しい試み〜さらなる可能性の開拓

 以下,それぞれの特性,内容や構造について述べていきたいと思う。
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