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『知恵と勇気のTV』から始まる“知恵と勇気のネットワーク”

(文責/The Galaxy Times日本語版編集委員 Maki Akuta)

 インターネットの個性を生かし、意義あるコンテンツ作りを目指す『知恵と勇気のTV』は、次世代コンテンツの『Show Case』という考え方を打ち出している。つまり、商品(コンテンツ)を見せるための飾り棚、という発想で、一般消費者だけでなく、業界に向けての情報発信サイトでもある。
 本来、“コンテンツ”とは、制作者の哲学がにじみ、発信することの意義が問われるものでなければならない。近年、インターネットでの動画(映像)配信が盛んだが、“動画を見る”だけに特化するなら、ネット配信よりトラブルが少なく、安くて快適なテレビで充分ではないだろうか。コンテンツの内容に、“インターネットである必然性”が盛り込まれない限り、ネットビジネスの進展、IT産業の発展は難しいだろう。
  『知恵と勇気のTV』は、マルチメディア企画開発、デジタルコンテンツの編集・制作・開発を行う株式会社デジラタ(http://www.d-rata.co.jp)が運営を行っている。同社の代表取締役社長・竹内好氏は、コンテンツ作りの精神について、次のように語ってくれた。

 「この業界では、デジタルコンテンツが不足している、とよく言われますが、それは大きな誤りだと思っています。コンテンツは、いたるところに溢れています。ただし、それらを見つけ、まとめあげていくには、しっかりとした視点、きちんと取り組む姿勢が必要です。
 コンテンツというのは、制作者の知識や経験や哲学によって作られるものです。形にするまでの試行錯誤は、もちろんあるでしょう。膨大な知悉・識見、膨大な時間・空間が費やされることによって、あるいは、それらが背景なり底辺なりに幾重にも折り重なって存在することにより、形成されるものです。
 昨今、人々が安易に、『コンテンツ』と口にする風潮に、私は強い違和感を覚えます。そこには、コンテンツを育む精神や、著作者に対する敬意といった空気は微塵も感じられず、物流素材として、または形骸だけについて語っているように思えるからです。
 私は“本当の意味のコンテンツ”を大切にしていきたい。育てて、増やして、それが他者に何かを与え、影響を及ぼし、心あるコンテンツ作りが業界全体のムーブメントになっていく。そんなきっかけを作れれば、これほど嬉しいことはありません 」

 もうひとつ、竹内氏が積極的に取り組もうとしている「無形財産を有形化する」というアプローチも、他と一線を画すものだ。「知識」「経験」「美意識」といった我々の頭の中にある形のない財産、だが、決して失われてはいけない無形の財産を有形化し、コンテンツに仕上げていくというものだ。
 「人類の文明・文化の歴史の証として我々の周囲に存在する無形の財産をもとに、どのようにして新しいデジタルコンテンツを生み出していくのか、質を高めていくのか、広げていくのか、また新たな発想へ転換させていくのか‥‥を、考えなくてはなりません。それこそがコンテンツに対して、取り組むべき姿勢なのです」
と、竹内氏は語る。なるほど、竹内氏が「コンテンツは、いたるところに溢れています」というのもうなずける。確かに知識や経験は、どこにでもあるだろう。ただし必要なのは、それらを発掘し、育て上げていく「確かな視点」と「技巧」なのだ。
 深い知識や価値ある経験の視覚化、著作者・制作者の哲学が香るコンテンツ作り‥‥。竹内氏が手がけるコンテンツは、次世代に語り継ぐにふさわしいコンテンツの『Show Case』となるだろう。

 竹内氏はこれまでにも、業界に対して数多くの提言を行ってきた。非営利団体、MPU(マルチメディア・プロデューサーズ・ユニオン)のチェアマンとしての活動も、そのひとつである。MPUは、9年間の活動を通して、数多くのマルチメディアタイトルを生み出し、数多くのコンテンツ制作者を育ててきた。そして今、ネットビジネス混迷の時代の課題解決に乗り出す。それが、コンテンツビジネスやEC(電子商取引)における情報交換、そうしたビジネスをサポートする中立的立場で動ける組織、『コンテンツビジネス協議会』である。 『コンテンツビジネス協議会』の主な役割は、コンテンツの配信・流通やECを行う企業へのコンサルテーション。これまでネットビジネスに多額のコストをかけ、結果が得られなかったケースの問題点を診断し、活性化するための総合的なアドバイスを行っていく。また、ネットビジネス立ち上げ段階からのサポートもあり、それぞれの企業のスタイル、事情にあった参加方法が可能であるという。また、この協議会を利用価値のあるコンテンツの集積地とすることも大きな目標である。そういった活動は、“作り手側の意識”を変革し、インターネットを、競争力のあるビジネスメディアに育てていくきっかけともなるだろう。

 協議会のサイトは、『知恵と勇気のネットワーク』と名付けられた。意義あるコンテンツを企画し、創り上げるために“知恵”を絞る。既存の枠組み・概念を打ち破ること、著作物の発掘と育成に時間とエネルギーを注ぐ“勇気”を持つ。そんな“モノ作りの原点”に立った“知恵と勇気のネットワーク”が広がっていくことを、強く願ってやまない。

 

 

“That's relief”の言葉の重さ、大切さ

 

 竹内好氏に、 トータルプランナーとして、またプロデューサーとして、最もプライオリティーを置いていることについてたずねてみた。
 「クライアントからの様々なご依頼にお応えする際に、私が最も心がけていること。それはクライアントに“That's relief”と言っていただけることです。Reliefとは、相手の不安や心配事を取り除くことで安心していただき、ホッとひと息ついていただくこと。不安感や危惧の念を抱いていたけれど、『ああ、うまく行ってよかった』と思っていただけることです。
 デジタルコンテンツやインターネット、マルチメディア関連の仕事には、とかく『話が違った』『想像していたのと随分かけ離れていた』というケースが、残念ながら非常に多いのが、今日の現状です。そのためクライアントも、関係者の誰もが、非常に慎重に、またナーバスになっているところがあります。そんな中で、私はクライアントや関係者の皆様に、安心していただけるプロセスと結果をお届けすることを、第一に考えています」
“That's relief”の言葉には、単にコンテンツの仕上がりの良さ、クオリティの高さというだけでなく、プロジェクト全体の流れに対する安心感、それらを統括するプロデューサーに対する信頼感、そして企画が動きだした時に生まれるであろう“将来に対する期待感”も含まれている。
 単に「いい仕事をした」ではとどまらないコンテンツビジネスの未来が、この言葉の中に、重く、深く、こめられている。


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