2002.7.5 【インタビュー】
  2002年ワールドカップ総括…ワールドカップ日韓共催が私たちに与えたもの
 

LADYWEB 次は、日本代表を総括していただきたいのですが。

KOH先生 よく頑張ったと思います。
こうなってみるとグループリーグを突破できたのが普通のことみたいですが、そんなことは無い訳で、ロシアだってベルギーだって、グループリーグ突破に向けて真剣に準備をしてきていたわけですから。特にベルギーは皆さんが思っているよりいいチームだったと思います。Round of 16でブラジルとベルギーが戦いましたよね。あの試合で、ベルギーのウィルモッツの先制ゴールがミスジャッチだったみたいですけれども取り消されてしまいました。あれが入っていたら、わからなかったですよ。
もちろん日本のグループリーグ突破を期待し願っていましたけれども、グループリーグ敗退の危険性も低くないと思っていたので、2勝1引き分けの1位突破というのは最上の成績だと思うんです。ですけれども、目標をそこに定めてたからダメなわけではないのですが、私たちも含めて、第一目標を突破して満足したつもりはないのですが、どこかでホッとした気持ちがあったと思うんですね。トルシエ監督もそうだと思うし、日本サッカー協会もそうだと思うし、それはある意味仕方がないと思うんですよ。日本全体としてのワールドカップにおける経験、体験、歴史、こだわりというのは、その程度であったわけで。
ベスト8やベスト4に行けたチャンスがあったかというと、あったと思います。あったと思いますけれども、トルコ戦までもう少し時間があればモチベーションの取り方があったかもしれないし、トルコ戦があんなに雨が降って昼間の試合だったために集中もサポーターの声援も拡散してしまったということもあったとも思います。サポーターの声援が強力だったら勝てたという訳ではないですけどね。宮城スタジアムの観客の皆さんも、普段あんまりサッカーのサポーターをしたことが無い人が多かったらしいのも事実で、その前の大阪の長居スタジアムの試合もそうだったみたいです。

海外の見方としては、なんだかんだ言っても日本は今回が2回目の出場ですから、よくベスト16に残ったなって言うのが率直な所なんじゃないかと思います。日本はよくやったじゃないか、それ以上勝ち進むとはとても思えなかったけどね、というのが、今の日本チームに対する評価判断だと思うんです。
さっきも言いましたように、私はもっと上に行ける力はあったと思います。ベスト16で、私は満足してません。韓国の勝ち進みとは関係なく、満足してません。でも私たちも、グループリーグ突破で一息ついてしまったし、決勝トーナメントの戦いについて何のイメージもなかった。私たちも、力不足だったなあと思います。

残念なこともあります。
選手たちが精一杯やってくれてるのはよくわかったし、ベストに近いパフォーマンスだったと思います。でも、ワールドカップというのは、どの国の選手を見てても皆さんおわかりのように、普段の何倍もの力を出していますよね。そこが日本選手の場合、どうだったのかな。
出せるものは100%しか出せないわけです。ところが、ワールドカップに臨むテンパッた感覚っていうのが、世界の選手たちにはありましたよね。そういうのは、私も含めて日本人には無理なのかな、そんな感じもします。
だから、ワールドカップが終わって海外から日本人選手にどれだけのオファーがくるだろうかと考えた時に、期待よりも少ないと思うのです。これくらいのことは出来る選手だってことは、海外クラブからしてみれば、調査済みですから。稲本にしても、中田浩二にしても、柳沢にしても、鈴木隆行にしても、これくらいは出来る選手だな、こういう所が素晴らしい選手だなということは、一応調査済みだと思うんです。で、ワールドカップというのは、よし獲得しよう、オファーしようという気持ちにさせるインパクトを与える、もっともっと秘めているポテンシャルを見せるショーケースなわけです。それを感じさせるパフォーマンスを見せた選手はいなかったのではないでしょうか、残念なことに。そういう面で、日本人選手たちに不満であるとか批判的なのではなくて、残念だな、もっと覚醒してほしかったというのはあります。たとえRound of 16で負けたとしても。
ワールドカップでは、オーバーヘッドシュートをやったこともない選手が決めてみせたりする訳でしょ。普段あんなシュート打たない人が凄いミドルシュートを決めたりする訳じゃないですか。そういうシーンが無かったですよね、日本には。

日本チームって、韓国と比べるとある意味、見た目損なんですよ。変な言い方になりますけども、韓国の選手っていうのは闘志を前面に出して走っり回って、最後まで本当に粘り強く、執念深く戦いますよね。わかりやすいですよね、気持ちが入ってるっていうのは。
日本の選手は、もちろん気持ちが入ってない訳じゃないのですが、日本のやり方が、別にトルシエ監督のやり方ということじゃなくて、非常にバランスを重視する戦い方ですよね。堅いとか柔軟性がないということではなくて、バランスに気を配った試合運びです。それは、なかなか見事な戦い方です。でも、時にはそれをブレイクして、後ろが薄くなってもここは何人もかけてゴールを奪うために攻める、というシーンはまずない。
バランスがとれているんだけど、それを重視しながら戦っていくというのが日本人のスタイルになっちゃっているから、批判は出来ないです。でもそれを、ワールドカップでは、例えば前半・後半2回ずつくらいは勝負をかけて行っちゃうくらいの、何時それを、どうやってのけるのか、ということも含めて、よりスーパーなところ、力強さや、思いもかけないアイディアや意表を突くプレーや創造性を、もっと出して欲しかったなあというのはあります。

LADYWEB ちょっと優等生?

KOH先生 そういう感じですね。海外メディアはよく日本選手のことをナイーブと言います。すごく当たってると思うんです。
日本人の選手のクリエイティブさとか器用さとかは、国際的にもかなり評価されているはずです。だけどそのナイーブさが抜けない。世界中で知られている中田英寿でも、少しはそう思われてるんじゃないでしょうか。

LADYWEB それはもう変わるものではないんですか?

KOH先生 痺れるような戦いの場数を積むしかないのではないでしょうか。私はJリーグも応援してますけれども、Jリーグの中だけでやっていては多分難しくて、だから海外に行けと、短絡的にはそうなってしまいますけれども、周りを世界中から集まって来た優秀な選手たちに囲まれ、いろいろな人種やスタイルの中で揉まれながら、ここでブレイクしてこんなことをやるのか、という経験を数多く体感すること。それによってしか、慎重さとかも持ち合わせながら力強さを身に付けて行くことはできないのではないでしょうか。
日本チームとしても、そういう環境でやってる選手が2人や3人ではなく、皆がそういうものを持ち合っていることが、どうしても必要だと思うんです。

LADYWEB メンタル面じゃないですけど、そういうところですよね。

KOH先生 そうですね。まあこれは日本人の特性でしょう。仕事だってそうじゃないですか。国際舞台では結構おっかなビックリですよね。
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