LADYWEB ポルトガル戦・イタリア戦・スペイン戦と、問題になった審判のジャッジについてなのですが、こういったことは、これまでのワールドカップでもよくあったことなのでしょうか?
KOH先生 まず明らかにしたいことは、誤審、ミスジャジという論調になっていますが、今回の件は、誤審とかミスジャジという性質のものではないということです。
ワールドカップにおけるミスジャジは、これまでもよくありました。1986年大会のマラドーナの「神の手」もそうだし、たくさんあります。
今回は、誰もがわかりやすいように、トッティのあれはシミュレーションかどうかとか、ゴール前にオフサイドだったのかオンサイドだったのかとか、ボールがラインを割っていたとか割っていなかったとか、ミスジャッジの部分に指摘ポイント、議論ポイントを絞ってきているから、ミスジャッジの話に集約してきています。そこにポイントを絞ることは、議論を噛み合わせるという点では決して間違いではなかったとは思います。またFIFAも、ミスジャッジで集約させようとしています。でも、多分サッカーをずっとご覧になってきたり親しんできた人からすれば、見ていて気分が悪くなったと思います。ホームアドバンテージの域を超えたものです。日本のTVでピクシー(ストイコビッチ)がいみじくも言った「やり過ぎ」ということです。
ホームアドバンテージということに関しては、もちろんあります。それはどんなスポーツにもありますよね。
日本だって、今大会でホームアドバンテージの恩恵を受けています。例えば、ベルギー戦の終了間際に楢崎が相手選手を倒したのは、アウェイだったらPKです。楢崎が相手選手を倒す前に、私は「危ない!」って叫んでいましたけれども。その前に稲本のゴールを取り消されてるというか、シュートの前にファウルのホイッスルがあったらしいんですが、それとイーブンにしてくれたのかな? とも思うのですけれども。
サッカーというのは、レフェリーに凄く権限がゆだねられてるスポーツですから、レフェリーが絶対なんです。
ホームアドバンテージは、逆にホームチームに不利な場合もあります。レフェリーが、ホームアドバンテージにならないようにしようと思うあまりに、逆にホームチームに厳しくなったりする場合もあるわけです。ベルギー戦は、どちらかというと日本に不利な判定のほうが多かったですね。その後、稲本の幻のゴールがあって、スタジアム全体がブーイングしましたよね。それで最後を見逃してくれたのかもしれません。あくまで想像、類推ですが。
ロシア戦でも前半、戸田が相手選手を引きずり倒しましたよね。あれはアウェイだったらPKかもしれません。
チュニジア戦でも前半終了間際に、戸田が相手選手を倒しました。私はあの時椅子から立ってしまいました。あれはアウェイではPKかもしれないし、アウェイでもPKではないかもしれないです。
だからそれくらい日本もホームアドバンテージはもらっています。
でも韓国の試合は、ホームアドバンテージの域を超えています。胡散臭いものが背景にあったのかどうかなんて、そんなことは知りませんし、そういうことを言いたいわけでもありません。でも、何かの力が働いてるんじゃないかと思わざるをえないくらいホームアドバンテージの域を超えたものがあったと、世界の大勢の人々が感じているわけです。だから、世界のフットボールファンは、フットボールを愛する人々は、悲しんでいたと思います。
これは、韓国の勝ち進みにケチをつけようとか、妬んでいるということでは全然ありません。あくまで、世界中の人々が後味の悪さを感じた、悲しみを覚えたということです。
で、そんなんでもイタリアは、残り2分か3分まで1-0で勝ってたわけですよね。イタリアにも勝ち切れなかったミスがあります。ビエリがそれまでにあと2点は決められていたのに、その決定的なチャンスを逃してしまいました。それを決めていれば問題なく勝っていたわけです。韓国の同点ゴールの時も、パヌッチがよろめかないで普通にクリアしていれば、そのまま終わっています。
スペインだって、延長に入ってからのモリエンテスのシュートがゴールポストの内側に当たっていれば、それで終わりだったわけです。これはアンラッキーとしか言いようがありませんが。
LADYWEB こういうことは毎回あるんですか。
KOH先生 いや、私の知っている限りは、ここまでのものは無いです。アルゼンチンが初優勝した1978年のアルゼンチン大会も、かなり凄かった記憶もありますが。
残念なのは、日本のメディア、特にテレビと新聞です。韓国頑張れ、共催国だから韓国を応援しようというのは結構です。同時にやっぱり、そういうところも触れざるをえないではないですか。どうしてなのか、全く触れようとしませんでしたね。海外のメディアが騒ぎ始めてからやっと、誤審ということで扱い始めました。誤審はどんなスポーツでもあるじゃないか、というようなことをお書きになる新聞の論説委員がいたり。今回の件は中国や台湾でも問題になっているらしいですし、海外のメディアは日本人の反応について関心を持っていたようです。世界から日本がどう見られてしまうのか、ということもあるのに、その辺りについて何も考えていない感じがしました。
韓国頑張れって一生懸命言うのは結構です。でも同時に、報道機関としてきちんと扱うべきではなかったかと思いました。
もっとも、日本のメディア、特にテレビについては、あれだけ海外からやって来る観戦者をフーリガン扱いしてきて、そのために不自由な思いをしたり不愉快な思いをした外国のお客さんも大勢いるはずですよね。スタジアム近辺では、店のシャッターを早々に下ろしてしまうなんていう、本当に恥ずかしい話もあります。それに対しても、何の責任も罪の意識も感じてないんでしょうね。視聴率を稼ぐことができたから、それでいいのでしょう。
普段あまりサッカーを観ていないと思われる、あるライターの方が、韓国とイタリアの一戦を見て、かなりサッカーって激しいんだね面白かった、というようなことを書いておられました。ところが日が改まるにつれて、いろいろなことが段々わかって来られたようなのです。それで、通常のメディアとネットではこんなに温度差があるのか、怖い気がする、と言っておられました。こんなことからも、現代社会の一端が垣間見られた気がします。
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